-2018年12月、仕事を楽しむためのWEBマガジンB-plusに掲載されました-

-WEBマガジンB-plusインタビュー対談内容-

南国の海で眠る貝を使う世界で一つのジュエリー

株式会社ファントムが制作する、貝殻を使用したジュエリー。宝石と見紛うほどの美しい光沢にまず目が奪われるが、実は研磨より大切なのは「貝殻が持つ自然の美を引き出すこと」だと、前田和明代表取締役は語る。南国の海の底で、その貝が静かに蓄えてきた美しさ。ときには数ヶ月におよぶ制作期間の中で、貝殻とじっくり向き合うという前田社長。その思いに、ガラス工芸作家としても活動する川上麻衣子氏が迫った。 

国際宝飾展で紹介された「竜天ネックレス」

川上 ジュエリーの販売や生花店の運営、土木工事など、多彩なビジネスを展開している株式会社ファントムさん。貝殻を素材にしたジュエリーは、今、著名人の間でも大きな評判を呼んでいるそうですね。
 
前田 2018年1月に開催された国際宝飾展のレセプションパーティーで、こちらの「幻の輝き 竜天ネックレス」が取り上げられたんです。第29回日本ジュエリー・ベスト・ドレッサー賞にて女優の上戸彩さんに手渡していただけたのは感激しましたね!
 
川上 このネックレスですか! なるほど、ハートの形がとってもチャーミングですね。
 
前田 ちなみにこの貝は、沖縄県石垣島付近に生息するものの中でも厳選した貝のみを使用しているため、とても希少なんです。
 
川上 天に昇る龍なんて、とても運気が上がりそう。男性への贈り物にもぴったりですね。それにしても艶がきれいで、とても貝殻には見えません。ほかにはどんな作品があるのか、私もものづくりに携わる者の端くれとして、ワクワクしちゃいます。 

貝殻本来の自然美で、女性の美も引き立てる

前田 では、私のアトリエで作品をご紹介しましょう。まずこちらがジュエリー類になります。
 
川上 先ほど見せていただいたネックレスに・・・この小さな穴が開いているのは、もしかしてピアスですか?
 
前田 そのとおり! ジュエリーのほかには、箸置きやウミガメの小物などもございますよ。
 
川上 わぁ、とってもキュート! どれも色合いが微妙に異なっているところがいいですね。2つとして同じものが世の中にないって、とても素敵ですよ。
 
前田 自然が造形する美しさは唯一無二ですね。私も加工時は、その貝殻が持つ色合い、つまり魅力を引き出すことを意識しているんです。
 
川上 魅力を引き出すだなんて、女心がくすぐられるなぁ(笑)。でも、貝殻を加工したジュエリーやグッズって、沖縄をはじめ南国の物産品というイメージがあります。東京で手がけているのは意外ですね。
 
前田 実はこの事業を始めたきっかけは、石垣島で貝殻の加工品を手にしたことだったんです。ただ、現地の職人さんがおっしゃるには、東京で販売するにはコスト面のハードルが高い、と。ならば私が販売しようと決意し、沖縄で貝加工の修業を始めました。漁師さんと一緒に海に潜って、貝を採集しましたね(笑)。ちなみにこちらの貝は、夜光貝と言います。

川上 材料の確保から修業されたんですね(笑)。貝殻の加工、細工と聞くと、とても会得が難しそうなイメージがあります。大変だったのではないですか?
 
前田 うーん、研磨など、基本的な技術はそこまで難しくはありませんね。むしろ、大変なのはそのあとのアレンジの部分です。個性のあるジュエリーにするためのセンス、エッセンスの加え方に繊細さが求められるんです。
 
川上 その貝殻本来の自然美に、ジュエリーとしての気品や深みをそれとなく持たせる。確かに、アートとも呼べるような難しさがありますね。そのような難しいお仕事をされている前田社長ご自身のことも詳しく知りたくなりますよ。これまでの歩みについても、じっくりお聞かせいただきましょう!

病床の母に起きた奇跡で自然が持つ力を実感

前田 私は炭鉱で有名な福岡県筑豊地方で生まれ、工業系の学校卒業後はソニー株式会社に就職しました。けれど、自立心の強い私に、大きな組織は肌に合わなかったんです(笑)。数ヶ月で退職して、長野県で不用品回収業の会社を営んだり、スノーボードのインストラクターを務めたりしました。
 
川上 自分が輝ける場所を探していたわけだ。現在、土木事業も手がけておられるとお聞きしています。
 
前田 そうですね。田舎育ちですし、学生の頃はアルバイトで土木工事に携わっていたので、土木事業は自分でもしっくりきた仕事の1つでした。
 
川上 生花店も経営されているそうですね。こちらはどのようなきっかけで?
 
前田 母の影響です。母が病気で倒れ、長らく意識が戻らないことがありました。医師も諦める状況だったのですが、ある日、ふとガーデニングが大好きだったことを思い出し、病室にシクラメンの鉢植えを飾ったんです。すると、突然意識が戻ったんです! それまでは周囲の声に無反応だったのが嘘のように、「もう少し水をあげたらいいよ」と鉢植えの世話の指示をするものですから、私もびっくりしましたよ(笑)。
 
川上 そんな奇跡があるんですね! 自然の持つパワーなんでしょうか。

前田 理屈ではない何かを感じましたね。それで生花店を運営したいと考え、フランスのパリに留学しまして。結婚式などでフラワーアレンジメントを手がける、フラワー装飾の勉強をしました。
 
川上 お話をうかがうほど、前田社長の奥深さを知れますね。3つの事業はそれぞれ、どのように展開されているのでしょう。
 
前田 土木事業については、東日本大震災発生時より復興事業に参加しています。生花店は、店舗販売ではなく注文、配達の形をとって経営しています。そしてジュエリー事業は、2019年の宝飾展に向けて鋭意製作中です。前回より出展ブースも大きくし、数多くの新作を出す予定なので、楽しみにしてください!

満ち足りない欲求があらゆる可能性を生む

川上 私もガラス工芸を長く続けていて、最近は猫の絵も描いています。「創作の楽しさは、年齢を重ねても色あせないな」と、感じているんですよ。前田社長は、創作のどのあたりにやりがいや喜びを見いだしていますか?
 
前田 やはり、自分がつくったものを気に入ってくれる方の存在ですね。本当のところ、貝殻のジュエリーも最初は事業にするつもりはなかったんです。趣味でつくり、「親しい人に喜んでもらえればいいな」くらいの気持ちだったんですよ。でも、贈った相手が、「ぜひお金を払わせてほしい」と言ってくれましてね。「洋服に合わせやすい」「宝石みたい」と喜んでもらううちに、貝殻のジュエリー制作に本腰を入れたくなり、事業化したんです。
 
川上 ビジネスにすることで、プロ意識が芽生えて品ぞろえも豊富になってくるでしょう。ネックレスのほか、ピアスや箸置きなどをつくられているのも、プロ意識の表れじゃないでしょうか。
 
前田 そうかもしれません。種類はまだまだ増やす予定ですよ。髪飾りやカフス、タイピンを新作で考えているところなんです!
 
川上 ますます楽しみです。帯留めなど、和服に合わせる装飾品も良さそうですね。
 
前田 おもしろいところでは、貝殻の加工品の可能性を広げたくて、ランプシェードにも挑戦中です。ペーパーによる手作業で磨くため、完成まで3ヶ月ほどかかるんですけどね(笑)。研磨機を使えば時間は短縮できるものの、機械では細かい作業はできないし、力の加減も難しいですから、手による磨きにこだわっているんです。

川上 ものづくりをするうえで、譲れないこだわりって本当に大事だと思います。でも、3ヶ月もひたすら磨くって、とてつもなく根気が必要ですね。

前田 そこで今、気分転換を兼ねて、新しいアトリエを仲間たちと自作しているんです。今のアトリエは、お客様に遊びに来ていただけるギャラリーとして使おうと思っています。
 
川上 それはナイスアイデアだと思います! 今後についても、楽しそうな夢をお描きなんじゃないですか?
 
前田 ジュエリー事業では、「Shine of Phantom(シャイン・オブ・ファントム)」という商標を取得したので、貝殻を用いたジュエリーブランドとして、対外的に輪を広げていきたいと考えています。その後、何をするかは・・・私自身もお楽しみにということで!
 
川上 前田社長がどのような活動をされていくのか。私もぜひ注目させていただきます。本日はありがとうございました! 

「仕事を楽しむ」とは‥

不安になることがあっても、楽しむために全力で前に進むことです。「やってみたい」と思うことがあるなら、まずチャレンジしてみることが大切だと思います。あのときやっておけば良かったと、後悔する前に・・・。
<完>
上記の対談インタビューはこちらからでもご覧いただけます。